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妊婦健診

妊娠初期(妊娠14週頃まで)

 妊娠の可能性がある場合には、遅くとも妊娠6週(前回の生理開始から6週間以内)には市販の検査薬で確認するか病院を受診し妊娠の確認をお勧めします。流産や異所性妊娠の発生リスクがあり、治療が遅れると母体の生命に関わることがあります。

 妊娠初期とは妊娠判明から胎盤の形成がおおよそ終わるまでの時期(妊娠4週~15週)を指します。妊娠5週頃から悪阻(いわゆるつわり)症状が出現することが多くなります。程度や持続期間に個人差がありますが16週頃を過ぎると徐々に改善していくことが多いです。その他、妊娠初期には腹痛や出血などを認める場合があります。正常でも起こることがありますが、無理せず安静に過ごし、症状が強い場合には自己判断せずに病院を受診してください。また、妊娠中は感染症にかかりやすくなるため一般的な感染予防に気を配るようにしましょう。感染症の中には胎児へ影響があるものもあるので特に気をつけて下さい(感染予防のために気をつけること 参照)。

 妊娠初期(妊娠10~14週頃)には下記の検査を行います。

ABO血液型、Rh血液型、赤血球不規則抗体、梅毒検査、HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体、HTLV-1抗体、風疹ウイルス抗体価、トキソプラズマ抗体、末梢血一般検査、血糖検査、子宮頚部細胞診検査、細菌性腟症検査、クラミジア抗原検査

感染予防のために気をつけること

 妊婦は免疫力が通常よりも弱くなるとされており、普段はかからない感染症にかかったり、病状が長引いたり悪くなり易いと言われています。また児への影響も少なくありません。可能であれば妊娠前から予防策を講じ、妊娠中も以下のような対策が有効と言われています。

  • 日頃から石けんと流水でしっかり手洗いをする習慣をつけましょう。
  • 食事は十分に火が通ったものを食べるように心掛けましょう。
  • 小さな子供のフォークやコップなどの食器を共有したり、食べ残しを食べることはやめましょう。
  • 猫、げっ歯類(ねずみなど)の排泄物に触れないようにしましょう。
  • 砂場あそびやガーデニングなど、素手での土いじりは避けましょう。
  • 妊娠中の性行為時にはコンドームを使用しましょう。
  • 体調が悪い人との接触、人混みをさけましょう。
  • どうしても人混みに行く必要がある場合はマスク着用を心がけ、帰宅後は手洗いうがいをする習慣を身につけましょう。

妊娠中期(15~28週)

 この時期から赤ちゃんの胎動や子宮の収縮を自覚するようになり、より妊娠を実感する時期でもあります。この時期の健診の目的は、流・早産の予防、妊娠糖尿病(GDM)・妊娠高血圧症候群の早期発見、胎児異常の早期発見と管理です。

 妊娠中期には下記の検査を行います。

子宮頸管長測定(16~24週に2回)、50gブドウ糖負荷テスト(24~27週)、貧血・血小板など血液一般、頸管長測定

妊娠後期(妊娠29週以降)

 妊娠後期になるとお腹が急に大きくなり、胸やけや消化不良、腰痛、頻尿などのマイナートラブルが多くなる時期です。ゆったりと過ごしながら入院・出産の準備をしましょう。

 妊娠後期には下記の検査をします。

B群溶血性連鎖球菌検査(35~36週)、末梢血一般検査(35週~)、肝・腎機能・凝固系検査、胎児心拍数モニタリング(36週~)

当院での分娩時処置に関して

 日本は世界で最も安全に妊娠、出産することが出来る国と言われています。しかしどのような妊娠、出産でも250人に1人の割合で母体の生命が危険な状態に陥ることがあるといわれており、経過の予測が難しいこともあります。いつでも母児の急変時に迅速に対応できるよう、当院ではあらかじめ分娩時下記のような処置を行う可能性があることを説明し、文書でお渡しすることにしています。あらかじめ妊婦さんとそのご家族に知っておいて頂くことでいざという時に素早く対応できると考えています。

 内容について、もう少し詳しい説明が聞きたい場合や質問がある場合にはいつでも外来担当医師、助産師にお訊ねください。

分娩時の血管確保(点滴)

 陣痛時の脱水予防の補液、急変時に薬剤や輸血を迅速に行うことができるように、分娩前に血管確保をさせていただきます。

臍帯(へその緒)血の血液ガス検査

 出生時の赤ちゃんの元気さを評価する一つの指標として検査を行います。結果は産科医療補償制度の審査の参考にもされます。

会陰切開術

 会陰部(産道と肛門あいだ)の伸展が不十分な場合や急速遂娩術を行う場合など必要と判断した場合は切開を行います。切開に際しては局所麻酔を行い、分娩後、縫合術を行います(吸収糸を使用し原則、抜糸は不要です)

急速遂娩術

 妊娠・分娩時に母体や胎児の状態が悪化した場合、迅速に分娩をしなければならない状況になることがあります。子宮口が十分に開き、赤ちゃんが産道出口付近に来ている場合には吸引分娩を行い、それ以外では緊急帝王切開術を行います。

輸血

 分娩、手術で大量出血し命に危険が及ぶ場合は輸血が必要になることがあります。輸血の合併症としてはアレルギーや未知のウイルスによる感染症、拒絶反応が起こることがあります。(宗教的理由により輸血を拒否される方は予め担当医にお申し出ください)